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東京家庭裁判所 昭和50年(家)3956号 審判

国籍 朝鮮

住所 東京都練馬区

申立人 金美子(仮名)

国籍 朝鮮

住所 申立人と同所

事件本人 李淳子(仮名)

主文

事件本人が本籍埼玉県上尾市○○○番地亡赤岩義春の子であることの認知請求の訴を提起するにつき、申立人を事件本人の特別代理人に選任する。

理由

一  申立人は主文と同旨の審判を求めた。

二  申立人は李仙全(国籍朝鮮)と昭和三一年一月一七日婚姻し、同四九年一一月一八日協議離婚届出をして離婚したものであるが、申立人はその間である同四七年六月四日事件本人を出産したので、同人は李仙全の嫡出子と推定される。ところで申立人の書面における主張によれば、「事件本人は申立人が法律上の夫であつた李仙全と別居した後に前掲亡赤岩義春と同棲し、同人との間で事件本人を出産したものであるから、事件本人は赤岩義春の子であり、同人の認知を求めるに当り、同人が昭和四八年一二月二五日死亡したので検察官を相手方として右認知を訴求するについて、事件本人が未成年につきその法定代理人により提訴する必要がある。」というのである。そこで法律を調べると、認知の訴については法例第一八条により、子に関しては認知の当時子の属する国の法律によるべく、大韓民国民法第八六三条によれば、子又はその法定代理人は父を相手に認知の訴を提起することができるところ、法例第二〇条により親子間の法律関係は父の本国法によるもので、本件においては子である事件本人は、前記李仙全の嫡出子たることの推定をうけ(大韓民国民法第九〇九条第一項により)家にある父である李仙全の親権に服す。ところが、事件本人が亡赤岩義春の認知を請求する訴提起について、李仙全が事件本人を代理して提訴することは、直ちに事件本人の利益に反するものかどうか疑問のふしはあるが、包括的に観ると事件本人と李仙全との間に利益相反ありと認めざるを得ないから同法第九二一条第一項により、事件本人のため特別代理人を選任すべきものと思料される。

よつて申立人の意見を聞いたうえ主文のとおり審判する。

(家事審判官 長利正己)

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